知っておきたい「性能」のこと
長く住むためには、住み心地の良さが絶対条件
理想通りの間取り・インテリアを実現したものの、夏は暑いし冬は寒い…などという家では困ってしまいます。
いわゆる“住み心地”の部分に大きく影響するのが『住宅性能』と言われる要素です。
建売住宅ならばすでに住宅性能は決まっているので仕様を確認して購入すればよいのですが、注文住宅は性能も自分で決められるため、どの程度の性能で建てればいいのか迷う事も多いでしょう。
高気密・高断熱の家はいまやスタンダードになりつつあります。
また、広く知られている高性能住宅に「長期優良住宅」や「ZEH(ゼッチ)」がありますね。
「聞いたことはあるけれど、詳しくはわからない」住宅性能についてお話します。
少し長いですが、最後までお読み頂けると嬉しいです。
- Index-
1.気密性能と断熱性能
住宅性能の中で大きなものと言えば、「気密性能」と「断熱性能」が上げられます。
この2つの性能で、家の中の温度が大きく変わり、快適さのひとつの指標となるからです。
気密性能とは「隙間の少ない建物にすることによって、同じく室温を外に逃がさず、冷暖房効率の高い室内環境をつくり出す能力(C値)」のことです。
断熱性能とは「建物からの熱の逃げやすさ(UA値)」と「建物への日射熱の入りやすさ(ηAC値)」の2点から導かれる指標です。
断熱の方法としては、外壁と内壁の間に断熱材を充填する内断熱、構造体全体を断熱材で覆う外断熱などがあります。
気密性を確保するには、断熱材を隙間なく施工する、気密性の高いドアやサッシなどを採用するといった方法です。
気密性能と断熱性能は影響しあうので、「高気密・高断熱」とひとくくりで言われることが多いのです。
高気密・高断熱の家はスタンダードになりつつあります。
高断熱って?
断熱性能は国土交通省が基準を定めていますが、「ここからが高断熱」という明言はされていません。
各ハウスメーカーが独自の基準で「高断熱」と判断しています。
その判断基準のひとつとしているのが「断熱性能等級」です。
断熱等性能等級とは、国土交通省が設定した基準で住宅の断熱性能を評価するための指標です。
等級1~等級8まであり、UA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(イータエーシー値:UA値と同じ住宅の外皮性能を構成する指標)という2つの数値で等級が決定されます。(2024.5月現在)
【表1】を見ると、断熱性能等級4が2025年義務化の数値になっています。
ここから考えると、現在は断熱性能等級5以上が「高断熱」とされるでしょう。
しかし、断熱等級5も2030年には最低基準になりますから、いつのどの数値をもって「高断熱」というかは難しいところです。
【表1】
朝日ホーム作成
高気密って?
気密性能については、以前は国の性能基準のひとつに入っていました(C値)が、現在は撤廃されていて明確な基準がありません。
そのため各メーカーは撤廃以前のC値を判断指標として、独自に基準値を設定しています。
C値とは「家全体の面積に対して、どれくらい隙間があるか」を示す数値です。
数値が小さいほど、気密性が高いということになります。
以前の基準値は断熱性能と同じく地域ごとに分かれており、北海道や東北の一部の寒冷地域では2.0、その他の地域では5.0が基準値でした。
現在、一般的には「C値=1.0以下」を高気密としているようです。
高断熱高気密のメリット・デメリット
■メリット
- 外気の影響を受けにくい
断熱性能が高いと外気の影響を受けにくいため、夏は涼しく冬は暖かく快適に過ごしやすくなります。 - 結露が発生しにくい
結露は外気温と室内の温度の差が大きいほど発生しやすくなります。
気密・断熱性能が高い家は外気の影響を受けにくいので、きちんと換気ができていれば結露が発生しにくくなります。 - ヒートショックのリスクの軽減
室内の気温の差も少なくなるため、ヒートショックのリスクの軽減にもなります。 - 光熱費の削減になる
外気を遮断するだけでなく、室内の温度も逃がしにくいため、冷暖房を効率よく利用できることで光熱費の削減につながります。 - 遮音性も高くなる
断熱材を隙間なく充填することで遮音効果も得られます。
■デメリット
- 内部結露してしまうことがある
内部結露とは、断熱材のすきまから空気が入ることで起こる現象で、壁の内部に結露が発生しカビなどの原因となります。 - 空気がこもりやすい
気密性が高く、室内の空気を逃しにくいということは、換気システムを稼働させていても空気やニオイがこもりやすいということでもあります。
食事後など気になる場合は、一時的に窓を開けたり、空気清浄機などを上手に利用するといいでしょう。 - 乾燥しやすくなる
換気システムが常に可動しているため、空気が乾燥しやすくなります。
雨天や部屋干しの際はいいのですが、冬場は加湿器などで調整しましょう。 - 建築費用が高くなる
断熱効果の高い建材を使用したり、高い精度で施工する技術などが求められるため、一般的な建築費用より高くなる傾向です。
しかし長い目で見ると、光熱費の削減などにつながります。
2.住宅性能評価とは?
住宅ローン減税でも控除枠の違いで採用されている住宅の性能評価。
そもそも「住宅性能評価」とは何でしょうか。
平成12年に施行された「品確法」に基づき制定された「住宅性能表示制度」にともない、設定されたのが住宅性能評価。
住宅性能評価とは、国が定めた一定の基準を国土交通省に登録された住宅性能評価機関が行う家の評価です。
統一された基準で評価されるため、中立で客観的な指標として活用されています。
評価は等級で表され、性能が良いほど数字が大きくなります。
等級3<等級5
この評価は後述する「長期優良住宅」や「ZEH」の認定基準としても準用されています。
どちらも国が決めた性能基準をクリアした「性能住宅」ですが、目的が違います。
また住宅ローンの控除優遇を受けるには、性能基準を満たしたうえで認定を受ける必要があります。
評価は10分野33項目(新築の場合)
出典:日本住宅保証検査機構(JIO)
評価内容は新築の場合、10分野33項目です。
そのうち4項目は必須項目となっています。
それ以外の6項目は任意となっていて、評価項目を指定できます。
項目が多くなれば、それだけ信頼性が高いという事で、住宅会社は性能のアピールポイントにできるのです。
その代わり、調査金額は高くなります。
評価項目10分野(33項目)★必須項目
評価項目は以下の10項目となり、それぞれの項目で詳細な検査をして等級をつけていきます。
項目の中には検査をしても等級がつかないものもあります。
2.火災時の安全に関すること(7項目)
3.劣化の軽減に関すること(1項目) ★
4.維持管理・更新への配慮に関すること(4項目)★
5.温熱環境・エネルギー消費量に関すること(2項目)★
6.空気環境に関すること(3項目)
7.光・視環境に関すること(2項目)
8.音環境に関すること(4項目)
9.高齢者への配慮に関すること(2項目)
10.防犯対策に関すること(1項目)
検査内容と等級
■必須4項目の検査内容と取得できる等級は次の通りです。
■任意6項目の検査内容と取得できる等級は次の通りです。
参考:
環境・省エネルギー計算センター【2023年版】住宅性能評価の項目・等級について専門家が徹底解説
3.高性能住宅の種類
高性能住宅といっても、いろいろな種類があります。
それぞれ特化している性能が違うため、ご自身に合ったものを選ぶと良いでしょう。
高性能住宅には国が推奨している「長期優良住宅」や「ZEH」などがあり、建築時には補助金等が利用できる場合があります。
長期優良住宅とは
出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
長期優良住宅とは、簡単に言うと「長く(約100年)安全に暮らせる」ことを目的とした家です。
具体的には、以下のような対策をしている家になります。
① 長期に使用するための構造及び設備を有していること ② 居住環境等への配慮を行っていること ③ 一定面積以上の住戸面積を有していること ④ 維持保全の期間、方法を定めていること ⑤ 自然災害への配慮を行っていること |
2022年からは特に「①長期に使用するための構造及び設備を有していること」が強化され、断熱性能や省エネルギー性能がZEH相当(後述します)に引き上げられました。
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅の認定には、基準をクリアする必要がありますが、どの項目を認定基準とするかは各所管行政庁が決めています。
例として、神奈川県の基準を上げてみます。
各行政により若干の違いはありますが、おおよそ以下の通りです。
資金計画があるところが興味深いですよね。
長期優良住宅のメリット
長期優良住宅の認定を受けられると、住宅ローン減税が13年間となり、所得税の控除額が最大409.5万円となります。
子育て世帯・若者夫婦世帯であれば、さらに借入限度額が5000万円、最大控除額が455万円になるのです。
また、長期優良住宅の建築に係る贈与税も1000万円まで非課税となります。
一般的な住宅の場合は500万円までなので、もし親御さんからの贈与を受けるならこの差は大きいのではないでしょうか。
他にも住宅ローンで優遇が受けられたり、税金控除や補助金の対象もひろがります。
長期優良住宅のデメリット
様々な優遇が受けられる一方、認定をうけるためには建築前に申請が必要になるため、着工までに通常より時間がかかります。
建築会社には最初に「長期優良住宅を取得したい」との希望をきちんと伝えておきましょう。
また認定費用の出費・建築費の増大や保全の記録保存義務などもあります。
参考:
神奈川建築確認検査機関 長期優良住宅建築等 申請ガイド
ZEHとは
ZEH(ゼッチ)は【ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス】の略称です。
「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」をさします。
引用:環境省HP『1.ZEHゼッチ(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは』
一次エネルギーとは、石油や天然ガス、水力や火力、太陽光など自然から直接得られた加工されていないエネルギーのこと。
ZEHとは簡単に言えば「断熱性能を高めたうえで、必要なエネルギーを自分で作り、エネルギーの需要と供給が±0になる家」なのです。
ZEHの定義
ZEHは、以下の①~③の全てに適合した住宅と定義されています。
断熱性能
まず、断熱性能が「省エネ法」(「エネルギーの使用の合理化に関する法律」)で定める外皮基準の基準値以下であることが必要です。
基準値は日本全国の都道府県を8つの地域に区分けし、UA値とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)がそれぞれ定められています。
神奈川県の省エネ基準地域区分は5~7で、大半の地域は6となっています。
5~7地域の基準UA値は0.87、基準ηAC値は、5地域:3.0、6地域:2.8、7地域:2.7
です。
なおかつ、強化外皮基準であるUA値が0.6以下かつηAC値(イータエーシー値:UA値と同じ住宅の外皮性能を構成する指標)が5地域:3.0、6地域:2.8、7地域:2.7でなければいけません。
これは断熱性能等級5に相当します。
省エネ性能
ZEHは「再生可能エネルギーを除く基準一次エネルギー消費量の削減」が必要とされます。
一次エネルギー消費量とは、住宅で使われている1年間の設備機器の消費エネルギーを熱量に換算した値を指し、主に冷暖房、換気、給湯、照明などが含まれます。
そのため「空調」「換気」「給湯」「照明」の4項目では、基準を満たした設備や設計を取り入れなければなりません。
具体的には「照明はすべてLEDであること」「HEMSで制御・確認できる高性能エアコンの設置」などです。
創エネ性能
創エネとはエネルギーをつくり出すことで、ZEHでは「再生可能エネルギー」と示されています。
具体的には、太陽光発電設備の導入をメインとして、家庭用燃料電池や蓄電池なども組み合わせて導入します。
これにより、日常的なエネルギー消費だけでなく災害時のエネルギー補充にも役立てられるのです。
省エネルギ―・創エネルギーを計測し、データの蓄積をするために計測装置「HEMS(ヘムス)」の導入も必須となります。
計測装置が安定稼働し、定期的にエネルギー使用状況を報告できる状態にしておくことが前提です。
高性能ZEH(ZEH+)
ZEHの基本的な定義は「消費エネルギーと創出エネルギーが±0」ですが、現行のZEHより省エネや再エネなどのさらなる自家消費拡大を目指したZEHに「ZEH+(ゼッチプラス)」があります。
将来的にはZEH+がスタンダードになっていくと考えられ、普及のため、通常のZEHよりも補助額が高く100万円/一戸となっています。
ZEH+の補助金を受けるためには、以下のような要件を満たしている必要があります。
参考:資源エネルギー庁 2023年度 [令和5年度]三省連携事業パンフレット
ZEHの認定条件
ZEHの認定を受けるには、上記の条件を満たすとともに、施工業者の制限があります。
- SII登録の施工業者
設計・建築、または販売を行う業者が、SIIに登録されている「ZEHビルダー」である必要があります。
SII(Sutainable open Innovation Initiative)は、ZEHの補助金を国から受け取り、書類審査によって申請者に給付する役割を負っている社団法人です。
補助金を申請する場合もZEHビルダー/プランナーが設計建築または販売することが必要条件となります。
つまり、ZEH基準を満たした家をSII認定ビルダー以外の業者が建てても、ZEHとは認められないので注意しましょう。
ZEHのメリット・デメリット
ZEHのメリットは光熱費の削減や災害時における電気の確保ができる点が大きいでしょう。
デメリットとしては、当初の建築費用の増加やデザイン・間取りの制限、太陽光発電システムの定期的なメンテナンス費用などがあります。
その他の高性能住宅
・次世代ZEH+
ZEH+よりさらに再生エネルギーなどの自家消費の拡大を目指し、ZEH+のその他の条件に加え、
①V2H設備
②蓄電システム
③太陽熱利用温水システム
④太陽光発電システム10kW以上 のいずれかを導入することが条件となっています。
定額100万円/戸に加え、①~④の設備導入の費用支援や次世代HEMSの実証を行う場合も追加で費用支援があります。
・LCCM住宅
Life Cycle Carbon Minus(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅の略称で「使用段階のCO2排出量に加え資材製造や建設段階のCO2排出量の削減、長寿命化によりライフサイクル全体(建築から解体・再利用などまで)を通じたCO2排出量をマイナスにする住宅」のことです。
主な条件は「強化外皮基準」「省エネ基準▲25%以上」「LCCO2評価の結果が0以下になること」や「CASBEE B+ランク以上または、長期優良住宅であること」など。
補助額は戸建て住宅の場合、上限140万円/戸かつ掛かり増し費用1/2以内となります。
※掛かり増し費用・・・通常の設備を入れた場合より余分にかかった分の費用のこと
・認定低炭素住宅
認定低炭素住宅は、建築物における生活や活動に伴って発生する二酸化炭素を抑制する措置を講じた建物のこと。
認定には、ZEH基準+低炭素化に資する措置などの選択措置が必要です。
住宅ローン減税で限度額の拡大など長期優良住宅と同等の控除が受けられます。
また、長期優良住宅と両方の認定を受けられ(それぞれの申請が必要)、税目の異なる場合は使い分けることが可能です。
・レジリエンス住宅
レジリエンスとは、物理学や心理学の用語で頑健性や強靱性・順応力・回復力などを表す言葉です。
レジリエンス住宅は災害時において建物の損傷が少なく、停電や断水などが起きても自立的にエネルギーを確保することができ、居住を継続することができる住宅を指します。
大きなくくりでは高性能住宅はどれもレジリエンス住宅ともいえますが、創エネだけではなく雨水浄水機能や地震時におけるガスや電気などの自動停止機能も必要とされます。
参考:国土交通省HP
エネチェンジ ZEH(ゼッチ)とは?条件や導入のメリット、注意点などを解説!
環境・省エネルギー計算センター ZEHの基準とは?ZEHの種類や条件、取得するメリットなどをプロが解説!
バランスと施工技術も大切
高気密・高断熱の家はスタンダードになりつつありますが、断熱性や気密性は高ければ高いほどいいのでしょうか。
「気密性を高めすぎたために、ドアのすきまから漏れる空気が鳴って気になる。ドアの開閉も重い」
弊社が未熟だったころの実例として、このようなことがありました。
そこで室内ドアを調整し通気をよくしたところ、音鳴りがおさまりドアの開閉もスムーズになりました。
この例のように、ただやみくもに性能を高めればよいのではなく、いろいろなバランスとそれを作る施工技術も大切になってきます。
4.朝日ホームの家
現在では多くの住宅メーカーが高気密・高断熱を謳っており、新築の家で断熱をしていない住宅はほぼないと言っていいでしょう。
しかし、断熱材を入れればそれでOKというものではなく、そこには施工能力の差が大きく出ます。
朝日ホームには、外注ではなく社員の施工管理技士がおり、厳しい施工管理をしています。
また、高性能になればなるほど建築費用が増加していくのは否めません。
朝日ホームはお客様に合わせて、予算と性能のバランスを一緒に考えます。
ですから一元的に、例えば「断熱性能は5、気密性能は1.0以上を保証」等は謳いません。
何を優先するのが良いか、予算内で欲しい性能が付けられるか、などご興味がある方はお気軽にご相談ください。
***
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
参考一覧:
国土交通省HP
↓ 次のステップはこちら!
↓ お気軽にご相談ください♪